本日、労働問題に関心を寄せる、日本と韓国の市民、労働者、実務家、研究者が一堂に会して、両国で進められている「働き方改革」の実態と課題を明らかにするフォーラムを開催しました。日韓両国が共に直面している労働関連の重要課題について、互いに知恵を出し合い協力して解決の糸口を探ることが目的でした。
本日のフォーラムでは、日韓両国から150名を超える参加者があり、朝から夕方まで、①働き方改革の実態と問題点、②公共部門の労働問題、③企業別労働組合を越えて、④労働法制からみた労働時間問題をテーマに4つのセッションを行い、議論しました。市民・労働組合の運動や取り組みについても報告を受け、議論することができました。
国レベルの労働改革
日本では、安倍政権が「働き方改革」を推進していますが、労働現場からは改革とは名ばかりで長時間労働や不安定な雇用の改善どころか、現状を追認し、むしろ悪化させる面が指摘されています。とくに、働く人々の実態を踏まえ、その声を反映させる民主的議論なしに一部企業の利益を優先した労働法・労働政策の決定過程が浮き彫りになりました。
韓国では、2017年5月、文在寅政権が「労働尊重」を中心公約に掲げて発足し、画期的な労働政策を進めました。これは、ソウル市が2011年からの自治体として画期的な労働政策を進めたものを、国レベルで受け入れて全国的に展開するものとして日本でも大いに注目されてきました。
しかし、政権後半に入って「改革にブレーキがかかり、公約から後退してきた」という批判が出ています。本日のフォーラムでは、韓国での改革の意義と現状、そして問題点について率直な報告を聞くことができました。
本日のフォーラムは、新自由主義的規制緩和政策に対抗する代案、つまり、働く人のための労働政策を実現するために、どのような課題があり、何に留意すべきか、重要な示唆点や指摘があったと思います。
労働・市民運動
日韓両国は労働・社会分野ではきわめて類似し、共通した後進面があります。OECD諸国の中で、長時間労働では最下位を争い、過労死が大きな社会問題となっています。また、労働組合の組織率は10%台にとどまり、労働協約適用率でもEU諸国に比べて極めて低い水準に留まっています。労働3権を十分に保障せず、ILO条約をわずかしか批准できていない点でも日韓は共通しています。
日本では「非正規公務員」の問題が、「官製ワーキングプア」と呼ばれ、ようやく社会的に認知されようとしている段階です。その点では、ソウル市や韓国政府が「模範的使用者」として、非正規職の正規職化の政策を公共部門で率先して推進していることが重要です。とくに、女性を中心とする公共部門非正規職がストライキをするまでに成長したことに注目する必要があります。
今後も継続した議論の交流を
本日、議論した問題以外にも、社会的格差、貧困、非正規雇用、低賃金、男女差別、ハラスメント、危険の外注化(下請化)、無権利な外国人労働など労働分野で共通する多くの問題を抱えています。とくに、女性、青年、非正規雇用労働者など、社会的弱者の要求を実現するための政策と運動の必要性は両国ともに共通しています。
ILOは、人間らしい労働、「Decent Work」の実現を重要目標として宣言しています。Decent Workの実現は日韓両国の労働政策・労働法において最も重要な前提となるべきだという点で合意できると思います。今後、このフォーラムを機に、日韓の市民、労働者、実務家、研究者間の緊密な交流と連帯をより広く持続的に創り出していく必要を強く訴えます。
2019年12月14日 京都・龍谷大学にて
日韓「働き方改革」フォーラム実行委員会